二度と辿り着けないうどん屋

時代劇

1990年代の東京、文京区のとある駅で、営業マンが取引先に向かう途中で立ち寄ったうどん屋。その店は、まるで時を超えたかのような不思議な空間だった。彼が体験した驚きの出来事とは――。

不思議なうどん屋の出会い

1990年代、ある営業マンが東京の文京区で取引先に向かっていた。

真夏の暑い日、太陽は真上に昇り、彼は最寄り駅から目的地まで歩いている途中で、出汁の良い香りに誘われてうどん屋に立ち寄った。

昼時にもかかわらず、店内には彼一人だけだった。

レトロな店内

店内はエアコンがなく、非常に暑かった。

店員のおばちゃんが持ってきた水も氷が入っていないぬるいもので、テーブルは横長の簡素なものであった。

さらに、かろうじて回っている扇風機は鉄製の羽を持つ古めかしいもので、まるで昔の時代にタイムスリップしたかのような雰囲気が漂っていた。

テレビは白黒で時代劇を映し、置かれている雑誌も古く、いつの時代のものかわからないものばかりだった。

驚愕の美味しさ

このまま居るべきか悩んでいたが、メニューを見ると、うどんも蕎麦も120円という驚くほど安い価格が目に入った。

彼は驚きつつも注文することにした。出てきたうどんの出汁を一口すすると、その美味しさに驚愕した。

あまりの美味しさに一気に食べ終え、後ろ髪を引かれる思いで店員のおばちゃんに声をかけて会計をすることにした。

不思議な会計

120円のお会計だったが、彼は1,000円札を手渡した。すると、おばちゃんはその1,000円札をまじまじと見つめ、まるで見たことのないものを見るような表情を浮かべた。

渋々と1,000円札を受け取ると、お釣りは500円札と昔の硬貨が戻ってきた。

彼は、うどんの美味しさとともに、価値がありそうな紙幣と硬貨を手に入れたことに得をした気分になった。

消えたうどん屋

取引先で仕事を済ませた後、彼は関係者にうどん屋の話をし、再びその店を訪れようとした。

しかし、うどん屋があった場所にはビルが建っており、どうしても見つからなかった。何度も往復してみたが、二度とそのうどん屋には辿りつくことができなかった。

彼は、自分が行った記憶が現実だったのか疑問に思い始めたが、財布の中にはお釣りで受け取った500円札と古い硬貨が残っていた。

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